前回の記事(https://jahistory.com/koudokeizai-seityou/)で、日本の高度経済成長について詳しくまとめてきたね。
高度経済成長は日本にとってもいい影響を及ぼした・・・のは間違いないんだけど、あまりに急成長してしまったために“おざなり”になってしまった部分も多くある。
中には無視できない「国民への悪影響」も高度経済成長の途中で生まれてしまった。
その最たるものが、水俣病(みなまた)などで知られる4大公害病というやつ。
今回は高度経済成長で生まれた負の側面について見ていくよ。
公害病って?
そもそも公害は、「主に企業が、近隣住民の健康や日常生活に何かしらの悪影響を与えること」をいう。
健康や日常生活への悪影響で典型的なものは
- 空気の汚染
- 水の汚染
- 土壌の汚染
- 地盤沈下
- うるさい
- くさい
- 揺れる
- まぶしい
ってとこだ。
中国で都市全体にもやがかかったような映像、テレビとかで見たこと無いかな?
あれは工場から出る有害な物質によって引き起こされた現象だ。
いわゆる「大気の汚染」に当たる公害ってわけだね。
で、公害病は「公害による有害物質によって引き起こされる病気」のこと。
軽いものは、大気汚染による喘息(ぜんそく)だったり目への刺激といった症状だけど、重いものになると、水銀やカドミウムなど人間にとって猛毒となる物質によって引き起こされる中毒症状が出る。
4大公害病のまとめ
高度経済成長期は、工場がバンバン作られていってそれが経済発展につながったけど、当時はまだあんまり「公害」ってものが問題視されていなかったのね。
原因が分からない謎の病気、として考えられていたものも多かった。
今でこそエントツから出る煙から工場排水まで厳しくチェックされているけど、1960年代あたりは垂れ流し状態のトコも多数あったわけだ。
当然公害もそこかしこで起きるわけね。
その中でも多くの人に、重い被害を出した公害をまとめて「4大公害病」と呼ぶ。
具体的には、
- イタイイタイ病
- 新潟水俣病
- 水俣病
- 四日市ぜんそく
この4つ。
じゃあそれぞれ詳しく見ていこうか。
あ、そうそう。
この4つの公害病の覚え方なんだけど、「1342」で覚えると良いよ。
1=イタイイタイ病、3=みなまた病、4=よっかいちぜんそく、2=にいがた水俣病
てな具合だ。
1342、という並び順は、公害病が発生した時期の古い順で並んでるから、この順番で覚えれば一石二鳥!
イタイイタイ病
- 発生した場所・・・富山県
- 原因・・・岐阜県の工場が川に流した水に「カドミウム」が入っていた。そのカドミウム入りの水や、それを使って作られた米や野菜を飲んだり食べたりした人がイタイイタイ病を発症した。(食物連鎖で起きた公害病)
- 症状・・・骨がスカスカになり骨折しやすくなったり、前身の骨が痛むようになったり、腎不全を起こしたりする。
この公害病の何がヒドイって、「この薬を飲めば治る!」みたいなものではなくて、せいぜい痛みを和らげるくらいしか対策できなかったこと。
イタイイタイ病にかかった人は「イタイ、イタイ」ということしかできなかったことから「イタイイタイ病」と名前が付けられたという。
ちなみにこの公害病は江戸時代から続いていて、4大公害病の中で一番古くからある公害だったりする。
水俣病
- 場所・・・熊本県
- 原因・・・化学工業を営んでいた会社の工場から川に流された有機水銀が、川魚・海魚などに吸収された。その魚を食べた住民が水俣病を発症した。
- 症状・・・主に脳にダメージがいく。中枢神経系がやられてしまうので、軽くて手足のしびれ、重くなると歩けなくなったり喋れなくなったりする。最悪の場合は死に至ることもある。
これは4大公害病の中でも一番有名な公害病だよね。
高度経済成長期ドンピシャで発生した公害病だし、一番被害者が多いしで「公害の代名詞」ともいえる。
なんと言っても水俣病の一番凶悪な点は「脳」にダメージを与えてしまうこと。
これ、後から直そうと思っても現代医学ですら直すことはできない。一旦中枢神経系がやられて歩けなくなってしまったら、ずっとそのままになってしまうんだ。
本当に悲惨な公害だよね。
四日市ぜんそく
- 場所・・・三重県
- 原因・・・工場から出た硫黄酸化物(有害物質)入りのガスが風に流されて大気を汚染した。
- 症状・・・喘息(呼吸困難の発作を繰り返す病気)がほとんど。重くなると肺にまで悪影響を及ぼす。呼吸困難で死亡することもある。
他の公害病と異なる点としては、水の汚染ではなくて大気の汚染である点だよね。
「症状は喘息かあ・・・。水俣病のがヒドイし大したことないな」なんて思ったら大間違い。
これは大人もそうだけど特に子供に大きな影響を及ぼした。
まだ子供は体が丈夫ではないから、喘息ひとつで命取りになることが多い。赤ちゃんとかは特に。
実際四日市ぜんそくでは多くの子供が被害に遭い、死者も多数出たんだ。
さらにタチ悪いことに、公害が分かっていた四日市市側が工場に対して文句言うどころか、「もっと工場つくって良いよ~」と住民の反対を押し切ってまで許可したりしていた。
市の方が被害を拡大させるというとんでもない事してたんだよね。
新潟水俣病
- 発生した場所・・・新潟
- 原因・・・化学工業を営んでいた会社の工場から川に流された有機水銀が、川の魚に吸収された。その川の魚を食べた住民が新潟水俣病にかかった。
- 症状・・・主に脳にダメージがいく。神経系がやられてしまうので、軽くて手足のしびれ、重くなると歩けなくなったり喋れなくなったりする。最悪の場合は死に至ることもある。
これ上で説明した水俣病と原因も症状も全く一緒って気づいた?
実はこの新潟水俣病、熊本の水俣病が起きた時点で国が急いで調査していれば、同じように水銀垂れ流しだった新潟の工場を全国的にストップさせられたはずなんだ。
でも政府はこれを怠ってしまったんだね。
その結果、水俣病とおんなじ公害病を発生させてしまった。
新潟水俣病については、工場だけじゃなく政府もダメだったんじゃね?という批判もある。
以上、4大公害病のまとめ。
ちなみに現在は工場から出る排水、排気はちゃんと有害物質を取り除く処理をするよう定められている。