前回は、『南総里見八犬伝』を生み出した読本作者曲亭馬琴について見てきたね。
『南総里見八犬伝』は現代の様々な作品に影響を与えているんだったよね。
今回はまた本の種類が変わって、「合巻」についてだ。
合巻は「黄表紙/読本の総集編」
合巻、というのは本のジャンルというよりは「まとめ本」のイメージだ。
古典をもとに、洒落や滑稽を混ぜ合わせ世の中を風刺する“黄表紙”が江戸中期(宝暦・天明文化あたり)で流行っていたのは以前の記事で話したよね。
で、その黄表紙はというと、寛政の改革で発禁にされてしまったんだったよね。
それ以降、黄表紙の内容は社会風刺ではなく「仇討ち話」に転換した。
しかし仇討ち話なんかはしっかりストーリーを練らないと全然面白くならないから、当然物語自体も長くなってしまう。
黄表紙系は大体10ページ1冊が基本だったから、ストーリーが長いと何冊にもなってしまう。
ここで、数冊まとめて綴じて一冊にしてしまうタイプのものが生まれた。
これが合巻なわけだ。
草双紙の最終形態と言われている。
といってもただそのまま綴じるだけではなく、挿絵を入れたり装飾を豪華にしたりといった工夫がなされた。
偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)
柳亭種彦は、自ら『偐紫田舎源氏』という作品を書き、これをまとめて合巻とした。
どんな内容化というと、紫式部が書いた『源氏物語』のストーリーをベースにしながらも「もっとおもしろく、もっとありえそうな話に」変換したもの。
時代を室町幕府に移して、幕府の大奥の内情について描いている。
挿絵も歌川国貞(人気浮世絵師)が担当していてそういった意味でも大人気だった。
有名な絵師さんが挿絵書いてたら読みたくなるもんね。
これは天保の改革で規制されてしまったため未完のまま終わってしまうけれど、14年間も執筆されていた種彦の代表作だ。
まとめ
種彦は、自分で合巻を作る傍ら、曲亭馬琴が描いた作品の合巻も出版するなどの活動もしていた。
合巻作者として非常に有名だったんだ。