GHQの行った数々の政策の中で、「農地改革」っていうのが一番“なんでやったのかわかりにくい政策”だと思っている。
パッと見「日本を戦争に向かわせないように」というGHQの方針に関係なさそうだよね?農家のこととか。
でも実は、関係大ありなんだ。
しかもこの農地改革に至っては、GHQの無理やり指示ってだけではなくて、日本政府も率先して行った政策なんだ。
一体どういうことなのか、詳しく見ていこう。
農地改革の内容
農地改革は、一言でいうと「地主制を廃止して、自作農を増やす」という政策。
まず、地主制は覚えてるかな?
地主(土地を持ってる人)が、小作人という実際に畑耕して農作物作るひとに土地を貸して、そのかわりとして作物を一部支払う(小作料)という制度ね。
農地改革で具体的に何が行われたかというと、
- 不在地主(農地のある村に住んでいない地主)の土地は全部没収
- 在村地主(農地にある村に住んでいる地主)は一定の広さ以上持っている土地を没収
という感じ。
ここで没収した土地は小作人たちに振り分けられた。
農地改革の「表の目的」
日本政府は、前々からこの地主制をなくしたいな、と思っていた。
地主制のダメなところは、地主は小作農から多くの小作料を取っていたから金持ちだったけど、対して小作農はめちゃ貧乏になってしまって「格差が酷い」ところ。
政府としてはこの格差をなくそうと考えていた。
一方GHQ側も地主制はなくすべき!と考えていた。
戦前の地主層は大金持ちだったんで、政治の世界などいろんなとこで影響力があった。
GHQは、力を持った地主も戦争を引き起こした原因の一つなのではないかと考えたわけだ。
というわけで日本政府、GHQの目的が一致したんで、協力して農地改革に踏み切った。
そもそも小作人に貸し付けている
農地改革の「裏の目的」
・・・というのはまあ表向きの目的なわけだ。
もちろん、上の項でいったような「格差是正」「戦争防止」の目的ももちろんあったんだけどさ。
日本、アメリカにはそれぞれ別の目的を持っていた。
日本の思惑
日本政府は、「格差是正」のほかに、「共産主義が日本に広がるのを防ぎたかった」という思惑があった。
どういうことか。
共産主義の国(ソ連)では、ちょうど日本の地主制のようなシステムで農業がおこなわれていた。
農家は、国が持ってる土地をかりて農業をやり、小作料を国に払うという仕組みがあったんだ。
で、問題なのは終戦後日本に共産主義の考え方が流れ込んできていたこと。
地主制がモロ共産主義に通じるとこがあったから、政府は「このまま地主制やってたら、共産主義が一気に広まってしまうかもしれん・・・それはヤバい」と考えた。
だから農地改革で地主制を廃止して、共産主義が広まるのを食い止めようとしていたんだ。
アメリカの思惑
GHQは「戦争防止」の目的のほか、日本政府と同じように「共産主義の広がりを防ぐため」という思惑も持っていた。
さらに加えて、「日本の農業の力を弱めて、アメリカの農産物を売りつけよう」と考えていたとも言われている。
これどういうことかというと。
農地改革が行われると地主制が廃止されて、小作人の人たちが自分の土地をもらえるようになるね。
でさ、この土地をもらった小作人の人みんなが農業すると思う?
絶対「貰った土地売って金にしたろ!」と考える人でるよね?
で、実際出た。
こうなると、全体的に農業をやっている土地が減ることになる。
つまり、日本の農業が衰退するってわけ。
こうなったらアメリカはチャンス。
アメリカは広大な土地を武器に大規模な農業をやってるから、安い価格で日本に輸出できるわけだ。
アメリカは農地改革で、日本の農業を弱らせて代わりにアメリカの農産物を売り込もうとした、裏の目的もあったんだ。