この記事では中学生高校生にもわかるようにリーマンショックについて解説します。
リーマンショックとは2008年9月15日にアメリカの投資銀行リーマンブラザーズが倒産した事によって、
世界の経済に大きな影響を与えて次々と連鎖的に金融危機が起きたことです。
投資銀行とは?
投資銀行とは大企業や個人の富裕層の代わりに金融取引を行う銀行です。会社の売買(M&A)や会社の資金調達のお手伝いなども行います。
リーマンブラザーズは負債額(借金の事)64兆円というアメリカ市場の最大の倒産となりました。
これだけ大きな金額の借金を抱えて倒産してしまったので、アメリカだけでなく世界中の銀行にも影響を与えたのです。
サブプライムローンとは?
アメリカでは2,000年以降から「住宅バブル」が起きていました。
1994年頃は10人に6.4人が住宅を購入していたのですが、2004年頃には10人7人近くが住宅を持っている計算でした。
ご存知かと思いますが、家は毎月お金を支払って借りる「賃貸」と、銀行からお金を借りる(ローン)事で購入する「所有」があります。
2,000年代アメリカの住宅市場はバブルだったため、人々は
「ローンを組んで家を買っても、家の価格はどんどん上がる!」
と思っていたのです。
人々が住宅を購入したがるから住宅の価格は上がる。
家を建てるために建築会社は住宅建築のために資材を大量に購入する。といった一連の流れが起きたのです。
そして、銀行もこのように考えました。
「返済できなくなったら家を売ってもらえば良いので、所得が低い人にもローンを組んでもらう!」
これが問題だったのです。
これがサブプライムローンです。
低所得者の方々はもしかしたら返済がきなくなってしまうかもしれないので、金利が高く設定されています。
アメリカの平均的な住宅ローン金利は6~7%だったのですが、サブプライムローンは2~3%上乗せされていました。
銀行側としては金利を高く設定する事で、例えば100人お金を借りるとして1人が返済できなくても残りの99人がちゃんと返済してくれれば儲かる仕組みになっています。
サブ=下位の
プライム=優遇
という事でサブプライムローンと呼ばれています。
2004年頃から住宅ローンのうち1割がサブプライムローンが占めていたと言われていて、その額は150兆円ほどにものぼっていました。
サブプライムローンの特徴はいきなり高金利を課すと低所得の人達の負担が大きいため
最初の2~3年は金利を低く設定しておいてその後、金利が上がる仕組みだったのです。
住宅価格がどんどん上がっている時はこれでも良かったです。
しかし、2007年頃を頭打ちにして住宅価格が下落を始めました。
サブプライムローンの何が問題だったか?
低所得の人達がローンを組んで住宅を購入する。
確かに住宅バブルが起きていて、バブル崩壊後に返済ができなくなってしまった。
これだけだったら、サブプライムローンはそんなに問題ではありませんでした。
証券会社や投資銀行がサブプライムローンを複雑化した事が問題だったのです。
例えば、銀行がAさんに5,000万円の融資(お金を貸すこと)を行ったとします。
Aさんはこれから30年かけて元本+金利を毎月返していきますね。
銀行からすると最初に5,000万円を渡しているので、5,000万円の現金が無くなってしまいます。
そして、Aさんにお金を貸している権利の事を「債権」と言います。
銀行は証券会社や投資銀行にAさんにお金を貸している権利「債権」を売ったりすることができるのです。
証券会社や投資銀行はAさんがお金を返済できなくなった場合でも住宅が担保としてついているので、
信用力が高い債権だと考えるのです。
これを「不動産担保証券」と言います。
サブプライムローン問題でも複数のサブプライムローンを組み合わせて、不動産担保証券を作って、
さらに、その不動産担保証券を担保にした商品を作って・・・さらにうまくいかなった時のために保険商品を作って・・・
と、どんどん複雑にしてしまったのです。
そして、世界中の金融機関に不動産担保証券を売りつけていました。
アメリカの債券を格付けする会社も、『サブプライムローンを裏付けにした不動産担保商品は安全!』とお墨付きを与えていたので、世界中の金融機関は安心して購入してしまっていたのです。
そして、アメリカの住宅価格が大きく下落して低所得の人達がローンの返済をできない!
となってしまった頃には、金融機関は「複雑になり過ぎていてどれだけ損失が出るのかわからない」といった不安から
購入していた不動産担保証券を一気に売るようになってしまったのです。
そして、世界中の金融機関が巨額の損失を出しました。
みずほ銀行は5,650億円の損失を計上、世界全体で96兆円もの損失額をだしてしまいました。
みずほ銀行の5,650億円を見ると途方もない金額に思えますが、日本は長引く不況でこういった証券商品には手をあまり出していなかったので、損失額は世界的に比べると少ない方なのです。
リーマンショックが起きる
ここまでの説明でおわかりになったかと思います。
投資銀行のリーマンブラザーズはサブプライムローンを証券した商品を大量に抱えていたため、住宅バブル崩壊と同時に
多額の損失を抱える事となってしまいました。
当時世界4位だった投資銀行の倒産は世界中の金融機関に不安を与え、
アメリカの銀行と取引をしていた世界中の金融機関にまで連鎖的に金融危機が起きました。
各国の政府は税金を投入して、銀行の資本を増やしたり損失保証を行いましたが、人々の生活にまで影響を与えるほどの経済危機となったのです。
これがリーマンショックが起きた原因とリーマンショックとは何かといったお話でした。
当時、2008年のリーマンショックはリーマンブラザーズで働いていた従業員すら当日まで倒産の事を知らされておらず、
デスク周りの荷物を段ボール箱に入れてビルから出てくる従業員の様子が印象的でした。
日本でも影響は大きく、銀行は「貸し渋り」と言われる現象で中小企業へ融資をしなかったり、人々はローンが組めないために高額な商品を購入しなくなったりと実体経済にまで影響を与えました。
この頃、アメリカでは「Too big to fail(大きすぎて潰せない)」という言葉が流行り、
金融機関が1つ潰れてしまうと、他の金融機関にも連鎖的に大きな影響を与えてしまい、潰したくても潰せないという(税金を投入せざるを得ない)という認識が広まりました。
それまで投資銀行などの金融機関は高給取りで知られていて、役員のボーナスが10億円なども当たり前だったため
『それだけ儲かっていたのに、いざとなったら国民の税金が使われるのか!』
と、デモまで開かれる事態になったのです。
その後はリーマンショックの反省を生かして、金融機関にはそれまで以上に厳しい規制が設けられるようになりました。
まとめ
リーマンショックは2,000年以降の住宅バブルと低所得者向けのサブプライムローンが発端で起きた金融危機です。
問題は金融機関がサブプライムローンを商品化して複雑にして、世界中の金融機関に売りつけた事です。
元々低所得者向けのローンであるため、『返済できるかどうか』という実態をかけ離れて
金融商品が一人歩きしてしまった実例でもあります。