国風文化についてのざっくりした解説は前回やったとおり。
今回からは、より詳しく平安時代の国風文化について見ていこうと思う。
なんと言っても文学の発展が目覚ましいわけだけど、この分野って割と国語(古文)に当たると思うから、ちょっと日本史っぽくないと感じちゃうかも。
しかし侮るなかれ。
難関大学になってくると、日本史と古文の複合問題とか出てきたりするんだなこれが。
意外と重要なトコだから、しっかり見ていってほしい。
伝奇物語・作り物語・歌物語
「物語」と一言で言っても、平安時代に生まれた文学作品は
- 伝奇物語
- 作り物語
- 歌物語
の3ジャンルで見ることができる。
おおざっぱにいうと伝奇物語も作り物語だから、実質2ジャンルとして見ることもできるけどね。
唯一、『源氏物語』だけはスペシャルな存在。
“作り物語と歌物語を融合させた新ジャンル”が『源氏物語』なんだ。
①伝奇物語の特徴、代表的な作品
伝奇、というのは“ファンタジックな”という意味と大体同じ。
だから「伝奇物語」は今でいう“ファンタジー小説”みたいなもんなわけだ。
同じ作り話でも、ファンタジー要素がほぼなくて、リアリティのある作り話の場合は単に「作り物語」と言われる。
伝奇物語として有名な作品は、やっぱり何と言っても『竹取物語』だ。
現代で『かぐや姫』という話になってるアレの原型だね。
竹取物語は作者も不詳・書かれた年月日も不詳と謎に包まれた作品なんだけど、様々な研究から『竹取物語』は日本最古の物語なのではないか、と考えられている。
竹から生まれた不思議な存在であるかぐや姫、そのかぐや姫を巡る恋模様、そして明かされる「かぐや姫の秘密」、富士山の名前について・・・。
現代の僕らが読んでも面白いと思える設定を数多く入れつつ、上手い事まとめていることでとても評価されている物語だ。
②作り物語の特徴、代表的な作品
①の伝奇物語のとこでも触れたけど、作り物語はファンタジー全開の伝奇物語とは違って、現実味のある物語のことを指す。
作り物語は“伝奇物語が進化してできたもの”で、最初伝奇物語が主流だったけど次第に作り物語に移っていったカタチ。
作り物語の中でとりわけ有名なのが、『落窪物語』という作品だ。
コレ、古代日本版の『シンデレラ』とか言われてるみたい。(実際結構似てると思う。)
主人公(めっちゃ可愛い女の子)が実のお母さんと死に別れて、その後継母と暮らすようになるんだけど、主人公の美貌に嫉妬したんだか継母その他からイジメを受ける。
しかしそんなある日、藤原道頼(実在する人物)が白馬の王子さながら現れ主人公に一目ぼれ。
更なるイジメを受ける主人公を見事救いだし、二人は結ばれる・・・というストーリー。
道頼という実在する人物をモデルにしているあたり、この『落窪物語』が作り物語なんだとよくわかる部分だよね。
③歌物語の特徴、代表的な作品
歌物語は伝奇物語、作り物語とはちょっと趣が異なる物語。
“歌”と書いてあることからも推測できるように、歌物語は「和歌」を中心にした物語のことだ。
具体的にいうと、「和歌に込められた心情から想像を膨らませて、一つの物語を作っちゃおう!」ってコンセプトの下作られているわけだ。
歌物語はモノによってはすごくファンタジックなストーリーの場合もあるし、リアルなストーリーな場合もある。
いずれにしても、和歌にまつわる話・和歌から発展させた話で作られてるのが歌物語の特徴。
さて、代表的な作品はというと・・・これは『伊勢物語』だね。
『伊勢物語』では、在原業平(実在する人物)が呼んだ和歌を中心に、その歌にまつわる話・想像を膨らませた話がショートストーリーとしてまとめられている。
そのショートストーリーを全部繋げると、ある一人の男の一生を描いた物語になる・・・といった具合。
(ちなみに「ある一人の男」ってのは、おそらく在原業平なのでは、と言われている。)
物語文学の集大成『源氏物語』
伝奇物語、作り物語、歌物語といったジャンルは主に平安時代前期~中期にかけて成熟していったんだけど、
平安中期になって「(伝奇物語から進化した)作り物語と、歌物語を統合した、新しいタイプの物語」が生み出された。
これこそ、紫式部が書いたとされる『源氏物語』だ。
「『源氏物語』こそ最高の作品だ!」と評されていて、それどころか「日本の文学史上で最高だ!」という声も多い。
『源氏物語』の概要とかは国語の授業でも詳しくやると思うから知ってる人がほとんどだと思う。
光源氏という超絶イケメン・頭脳明晰という補正MAXの主人公が、
様々な女性と遊ぶ(意味深)中で幸せと苦悩を繰り返す様子を描く・・・というのが『源氏物語』の本筋だよね。
物語に出てくる登場人物の心理描写がとても繊細である点や、ストーリーの構成が非常に良くできている点、
背景には当時の社会情勢が内包されている点などで非常に評価が高い。
『源氏物語』は平安中期に成立したものだけど、平安後期の時点ですでに「国宝級の作品だ!」「源氏物語を読まずして歌人(和歌を詠む人)と称すなんて、ちゃんちゃらおかしいぜ!」とめちゃくちゃ評価されてたらしい。
加えて、源氏物語を題材にした日本最古の絵巻(『源氏物語絵巻』)も登場するなど、文学以外の分野にも影響を及ぼした。
さらに、『源氏物語』が登場した後に書かれた物語はすべて、『源氏物語』の影響を色濃く受けているといわれている。
その後の作品は“源氏亜流物語”なんて言われることもあるらしいよ(笑)。
『源氏物語』の登場は、日本にとって一大センセーションだったんだね。