今回解説するのは、かなり高度な取引のお話。
徳川吉宗の時代、これまで禁止されてきた「空米取引」を解禁した。
これは非常に大きな決断だった。
今回は「空米取引」を詳しく解説するよ。
ちょっと内容が難しいから、何回かに分けて説明していくね。
武士の実質給料は毎年変動する!?
まずは当時の武士の金銭事情から。
当時、武士の給料は「米」で支払われていた。
しかし、江戸時代は物々交換の世界じゃなく貨幣経済だから、米のままでは何も買えないわけだ。
つまり、米をお金(江戸であれば金、大坂であれば銀)に換える必要がある。
ここで問題になってくるのが、米の値段や金銀は変動相場(需要と供給のバランスによって、価値が変動する)であるということ。
どういうことか。
例えば、「今年は去年よりも米が豊作だった」としよう。
すると、日本には米がたっくさん流通することになる。
基本的に希少性がないと値段が安くなるから、米の値段は去年よりも下がるわけだ。
去年の相場は米1石あたり10万円、今年の相場は1石あたり9万円としよう。
一方、武士がもらう米の量は去年も今年も変わらない。今回では1万石としようか。
さて、ここでちょっと計算。
去年のレートで給料として与えられた1万石をお金にすると、10万円×1万石=10億円。
今年のレートで1万石を換金すると、9万円×1万石=9億円。
ここから分かるように、米の値段が下がったら給料がめちゃくちゃ下がる。
これに加えて、金銀間のレートも変動するからより毎年の実質給料額に差が出てしまう。
また吉宗の時代は「米価安の諸色高」(米の値段が安く、米以外の物価が高い)と言われる経済状況だったから、武士にとって「給料安いのに物価高い」という状況に陥っていたんだ。
これを何とかすべく吉宗が解禁したのが、空米取引、つまり先物取引だ。
前編まとめ
普通に米を換金していたんでは、米の豊作・凶作に左右されて収入が不安定になってしまう、という問題が武士にはあった。
そして、この問題を解決すべく解禁された先物取引。
「先物取引ってなんぞや!」と気になって仕方がないと思うので、さっそく中編で核心を見に行こう。