前回は、国学者の塙保己一について見てきたね。
盲目でありながら学問に非常に長けていて、様々な学問を習得していったんだったね。
そんな保己一の最大の功績は、『群書類従(ぐんしょるいじゅう)』の作成だ。
群書類従って?
保己一は、「古書」について憂いを抱いていた。
古書っていうのは、俗にいう古本のこと。
本はその時代の様子を反映していたり、貴重な情報を持っていたりするからとっても大切なモノなんだ。
しかし、もし火事や天災でその本が失われてしまったら、未来永劫消滅してしまうことになる。
これが保己一は心配でならなかった。
そこで、全国の大名や自社・公家・幕府に協力を依頼して膨大な古書を収集して、編集した。
それを全部まとめてシリーズ化したのが、『群書類従』というわけだ。
実に古代から江戸時代初めごろまでの、1,237種類の歴史書や文学作品が収録されている。
全530巻666冊というぶっ飛んだ冊数のシリーズとなった。
こうして古書がまとめられたことで、多くの資料が失われずに済んだと言われている。
ちなみに、今原稿用紙といえば20字×20行の400字詰原稿用紙のことを言うよね。
実は、この「1枚につき400字」というのは群書類従が由来なんだ。
群書類従を印刷するための版木を作るとき、できるだけ400字に収めていたことが起源と言われいる。
まとめ+おまけ
塙保己一は、19世紀~20世紀にかけて活躍した偉人、ヘレン・ケラーに大きな影響を与えた人でもある。
ヘレン・ケラーは目も耳も見えず苦しんでいた時、母親から「同じ盲目だった塙保己一を見習いなさい」と言われていたという。
盲目ながらも多数の功績を残した保己一をヘレンも尊敬し、来日した際には保己一の銅像に触れ「日本に来て一番有意義だったことの一つ」といったほど。
それから保己一についてもう一つ。
保己一は賀茂真淵や本居宣長のように、「儒学や仏教を排して本来の精神に立ち返ろう!」というような復古思想に傾倒し、思想を広めた国学者ではない。
国学はもともと「日本の古典を読んで研究する」という学問。
真淵や宣長の復古思想はあくまで国学から派生したもので、保己一は純粋な国学者だったんだよ。